そんな征志は、ちょっと物静かで冷たい印象を人に与えるところがあった。まあ、実際はそう見えるだけで、付き合ってみると、結構面白い奴だし退屈しないんだけど。
「だいたいあの、人をバカにしたような目がいけねぇんだよなぁ」
呟きながら、俺は一人で頷く。いや、目だけでなく、体全体で人をバカにしてんだよな、あいつは。
クスクスと笑って、前方に目を向ける。ふと道路の真ん中に黒い物体を見つけて、俺は足を止めた。
微かに、動きがある。
なんだ? …あれ。
一歩一歩、ゆっくりと近付く。それが何か判った瞬間、俺は息をのんだ。
「……ひっ…でぇ……。どーしたんだよ、お前ッ」
それは、毒々しい血に塗れた小さな仔猫だった。
右目にはボーガンの矢が刺さり、体中傷だらけだ。もともとは真っ白であっただろう毛は、血と泥で汚れていた。
「誰が、こんな酷い事を……」
「…シ…ャァ……」
声にならない声で、仔猫が鳴く。無意識に食いしばっていた俺の歯からは、ギリギリと音が洩れた。
子猫の口元へと持っていった俺の指を、微かに舐めてくる。
「ばっ……か…やろ……」
そんなだから、こんな目に合っちまうんだろうが!
飼い猫であったのか。人間にこんな酷い仕打ちをされながら、それでも人に愛情を示す。