幻の欠片6


 

 「はあ? それはいつもの事だろ? じゃなくて、最近知らない奴なんだけど、時間に関係なく同じ場所でいつも会う奴がいるとか」

 

 「全然」

 

 「変な夢を見るとか」

 

 「まったく」

 

  ブンブンと首を振る俺に、片眉を上げる。

 

 「ほんとに?」

 

  疑われてもどうしようもない。視えもしない幽霊に憑かれる心当たりもないし、最近変わった事なんて、なんにも……。

 

  ん? いや。そう言えばあったかな? 昨日。

 

  俺は考えながら、ポリポリと頭をかいた。

 

 「あー、実は今朝。兄貴が変と言えば変な事を言ってた。俺はあいつが寝ぼけたんだと思ったんだけど」

 

 「…ほう」

 

  征志が鋭い視線を俺へと流して、まばたきで先を促うながす。

 

 「昨日の夜中、喉が渇いたとかで電気もつけずに台所にいたらしいんだ。そしたら二階から階段を下りてくる俺の足音がして、玄関が閉まる音がしたって言うんだ。で、てっきり俺が夜中にこっそり外に行ったと思って、玄関を見たら鍵はかかってるし俺の靴もある。まさかと思って俺の部屋を覗いたら、俺はちゃんとベッドで寝てたって言うんだ。ま、当たり前だけど」

 


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