オリジナル小説

宿運 君がため 微弱な魂 2


 

「まさか……」

 

 聞こえる筈がない。俺は叫んだ訳じゃないんだ。独り言のように、呟いただけなのに……。

 

 驚いた俺が彼女から目を離せずにいると、少女は右手を俺の方に差し延べるように突き出した。窓から身を乗り出し、今にも降りてきそうな雰囲気を放つ。

 

 ――が、その時。

 

 突然強い風が吹きつけて、白いレースカーテンが彼女を隠してしまった。

 

 強風に腕で顔を庇いながら、俺は一瞬、目を閉じた。

 

 ガサガサガサ………。

 

 木々の揺れる音が聞こえる。それに紛れてか細い声が、微かに耳へと届いた。

 

「私に力をください……」

 

 と。

 

「な……にぃ」

 

 俺は顔を上げ窓を見上げたが、そこに少女の姿はなかった。その上窓はちゃんと閉まっているし、カーテンもピッタリと閉じられている。

 

 そんなバカな。俺が目を閉じたのは、ほんの一瞬だった筈だ。いくらなんでも窓を閉めた上に、カーテンまで閉じれる訳がない……。

 

 俺は納得がいかず眉を寄せたが、現実なのだから仕方がない。まさかあの家に乗り込んで、

 

「今、女の子が窓から俺を見ていたでしょう?」

 

などと聞ける筈もない。

 

「まさか今の……」

 

 俺は浮かんできた恐ろしい考えに首を振り、何も見なかった事にしよう……と、心に決めた。

 


 

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