オリジナルBL小説

光のどけき しづこころなく7


 はしゃぐように言う母親に、「あんたは女子高生か」と内心で呆れた突っ込みを入れつつ、玄関へと向かった。母親に急かされるまでもなく、急いで靴を履く。

 

「あの……」

 

 ドアを開けようとした俺に、不安そうな声がかけられる。

 

「……なるべく、早く帰ってね」

 

 振り返ると、無理して笑顔を浮かべる母親の顔があった。

 

 

 ――日付が変わるまでには帰しますよ。

 

 

 あの人が言った口調を真似て言ってやろうかとも思ったが、やめた。これ以上、俺も母さんも、嫌な気分を味わう必要はないと思った。

 

「ああ。……行ってきます」

 

 ボソリと呟いて、玄関を出る。自転車を押して門扉を出るなり、急いで地面を蹴ってこぎ出した。

 

 なぜだろう、その瞬間。先程の嫌な気分も感傷も、どこかへと消え去ってしまう。

 

 只ひたすらペダルを踏んで、弘人の元へと向かった。

 

 あいつの家までは、自転車で20分程だ。どんなに急いでも、15分はかかる。

 

 ――弘人の事だ。ああは言っていたが、すでに公園へ来て待って いるに違いない。

 

「ったく。へんなトコ、律儀なんだよ。あいつ」