自室のドアを開け、壁にもたれかかるようにして灯りのスイッチを押す。
闇は嫌いだ……。何かに掴まらないと、取り込まれそうになる。何に取り込まれるというのか、何故こんなにも怯えているのか、自分でもまったく解らない。
壁にピンで無造作に貼った、孝亮と二人で撮った写真に目を向けて、俺は口許をゆるめた。
あいつがいたら、笑い飛ばされるだろう。――いや。あいつさえいれば、闇だって怖くはないだろうか。
「よっと」
俺はバスタオルを床に放って、濡れた髪のままベッドへと飛び込んだ。
『じゃあ……今夜な』
不意に、征志の言葉を思い出す。そう言い放った征志は、訊き返す俺を振り返りもせず、ヒラヒラと手を振って行ってしまったのだ。
「言い間違い、だよなぁ……?」
どうもそうでないような気もするが、夜の十時を過ぎたこの時間に、征志が訪ねて来るとも思えなかった。
「まあ……いっ…かぁ……」
そんな事より、ひどく眠い。
心なしか、体が熱っぽい気もする。手の甲を額に乗せて、静かに目を閉じた。
沈み込んでゆくような感覚。音もなく、闇に包まれた『視界』が廻る。
「いま……行くから……」
無意識に呟いたセリフが、声となって出たのか、それとも心の中だけで呟いた言葉だったのか……。
その意味すらも解らぬまま、俺は、どっぷりと闇に浸っていった。