宿運 扉3


 

  フウーと長く息を吐いた孝亮の口から、冷たい銀色の煙が夜の闇へと昇っていく。その行方を目で追うと、煙は空に浮かんだ月と同化して、消えていった。

 

  木の柵に腰かけた孝亮の肩越しに、街のネオンがキラキラと光っている。

 

 「この山からの夜景はイケるな」

 

  呟いた俺に、孝亮はクスリと笑って、チラリと後ろのネオンを見遣った。

 

 「なに? 僚紘。お前に景色を堪能する情緒なんてモンがあったのかよ?」

 

  タバコをくわえたまま、目を伏せるようにした微笑み。

 

 「バーカ! この景色を理解できないのは、あんたぐらいだよ」

 

  言って、からかうような目で俺を見た孝亮の口から、タバコを奪い取る。

 

 「だいたいなー、こんなトコに俺なんか連れて来てどーすんだよ。女に見せてやれよ、こんなモンは」

 

  取り上げたタバコを咥える。ゆっくりと吸い込んで、ホゥと煙を吐き出した。

 

 「カカッ。いんだよ、お前で。俺は景色じゃなく、バイク走らせに来たんだからよ。__それより、十六のガキがそんな美味そうにタバコを吸うんじゃねぇ」

 

  その台詞に俺はフンと鼻を鳴らして、孝亮の隣へと腰を降ろした。

 


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