この街では人間が、突然姿を消す。
それは国家全体としては脅威となる程の人数ではなかったし、頻発して起こる訳でもなかったが、原因が何ひとつ解明されていない事が、一部の人間を動揺させ怯えさせた。
夜、自宅の寝室で寝ている時もあれば、昼間、街を歩いている時もある。時間や場所、一緒にいる者の人数に関係なく、まるで掻き消えるように姿を消すのだ。
数人が1度に姿を消す事もあれば、複数いる者達の中で1人だけが姿を消す時もある。
――神隠し。
まるで神隠しのようじゃないか……と。誰かが言い始めた。
神に気に入られた聖者が姿を消す。
神の怒りをかった愚者が存在を消される。
んなのはここ日本の神隠しとは毛色が違うだろうが。
そうツッこんでやりたいような真逆の二説が、若者達を中心にまことしやかに囁かれていた。
時折ミケは、行方不明者の貼り紙をじっと見ている時がある。「神隠し」の噂を信じているわけではないだろうが、貼り紙を見ている横顔がひどく真剣なことに、リヴァイの胸がザワついていた。
チリチリと苛立つような――それは焦りにも似た感覚。
「……知り合いか?」
顔を覗き込んだまま問えば、ミケはゆっくりと視線をリヴァイに向ける。