幻の欠片4


 

  一人っ子だった孝亮の代わりに、毎日おばさんの手料理を食べる。きっとまだ食べたかっただろう孝亮の代わりに。そして、もっと孝亮に食べて欲しかっただろう、おばさんの為に。

 

 「お前も一回、御馳走になってみれば?」

 

  征志を見てニヤリと笑う俺に、片眉をヒョイと上げる。仕方ないというふうに短い溜め息を吐いて、征志は歩き出した。

 

 「ま、いいか。直接害はなさそうだし……な」

 

  言いながらも何かが引っかかるのか、おかしな顔をする。

 

 「なんだよ、変なカオして。やっかいな奴なのか? まさかまた……鬼、とか?」

 

 「ん。いや、彼は人間だよ。でも……なんか……」

 

 「ああ、とりあえず。オバケが男だってコトだけは解った」

 

  等閑に頷く。その横で、征志が突然立ち止まった。俺の両肩を掴んでジッと顔を覗き込みながら、ゆっくりと目を細めていく。

 

 「……ちょっ…」

 

  こいつがこの目をする時はヤバい。これは、何かを探ろうとしてる目だ。その上、その対象が俺だなんて、まったく、ジョーダンじゃねぇ。

 

 「な、なんだよ。カンベンしてくれよ。俺、関係ねぇだろッ」

 

  両手で征志を押しやって、未練がましく上目使いで俺を見る征志を睨み返す。

 


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