幻の欠片2


 

 ほんと。正直に言う。鏑木(かぶらぎ)僚紘(ともひろ)、十七歳。俺は今までなんの変哲もない、そう、平凡な人生を歩んできたんだ。なのに、なんで。なぜこの俺が、今さら幽霊だのオバケだのと頻繁に遭遇しないといけないんだ!

 

  こういう状況でなければ、キレイだなと思うだろう黄色い銀杏の枝葉を見上げて、俺は拳(こぶし)を振り上げたい衝動にかられた。

 

 「ブツブツとうるさいぞ、鏑木。どうした? 腹でも減ったか?」

 

  俺の怒りの原因をいつも作ってくれる、右隣に立つ男をジロリと睨む。

 

 「お前こそ、今度はなんだよ? 落ち武者か? 犬か? 猫か? それとも、恨みがましい女の幽霊でもいるのか?」

 

  俺はうんざりしながら、先程から道端の銀杏の樹をじっと見上げる友人に声をかけた。

 

  上宮(かみつみや)征志(せいじ)。前世で陰陽師をしていたというこいつは、その能力が今でも備わってるらしく、こいつにその気がなくても幽霊だのオバケだのが勝手に集まってきては、助けを求めてくる。俺も、その能力のお陰で一度、命を救われた事があった。

 

  征志と知り合ってから、それまで縁のなかった俺までもが、それを体験するはめになっていた。

 


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