宿運 扉 16


 

  途端。パアーッと、眩しい光が右側から俺を照らした。見ると、トラックがこちらに突っ込んで来ようとしている。

 

 「うっわあああぁ!」

 

  逃げようとするが、体が動かない。

 

  もちろん、トラックなんかも呼んでねぇぞッ! 

 

 「孝亮ェッ」

 

  目をつぶり、死を覚悟した瞬間。襟首が後ろから掴まれた。グイッと引っ張られ、後ろに放り出される。

 

 「イテッ!」

 

  背中を強(したた)か打つと同時に、目の前で物凄い音がした。トラックが、ガードレールに突っ込んだのだ。

 

 「なんだと!」

 

  叫んで起き上がった俺の前に、突如、孝亮が姿を現した。

 

 「この! 大バカ野郎! あれ程ここへは来るなと言っただろうが!」

 

  ガッと俺の胸倉を両手で掴んで、恐ろしい形相で怒鳴りあげる。

 

 「あれ……孝亮? 今のトラック……お前がやったんじゃ…」

 

  ぶつけた背中をさすりながら、孝亮を見上げる。

 

 「はぁ? 寝ぼけてんのか? お前」

 

  孝亮は眉を寄せると、大きく溜め息をついた。

 

 「…だって……あれ? どーなってんだ?」

 

 「どーなってんだ、じゃねぇ! ……ったく。なんでここへ来たんだ」

 

  胸倉を掴む手を離して、呆れた声で言う。

 

 「なんでって……あんた、俺を殺したいんじゃないのか?」

 


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