幻の欠片7


 

  俺の話を聞いていた征志の目が、驚きにゆっくりと見開かれていく。不意に立ち止まった征志は、俺から視線を外してまっすぐと前を睨むように見据えた。

 

 「なるほどね。……鏑木、お前悪い夢を見ない代わりに、良い夢も見ないだろ? と言うよりは。最近、夢見た事あるか?」

 

 「夢……ねぇ…?」

 

  腕を組んで考え込んだ俺は、唸りながら首を傾げた。

 

  そういや、最近夢なんて見てないかも。でも、夢も見ずにグッスリと寝てるわりには、寝起きが悪いんだよなぁ。

 

  朝起きてもすっきりしない。寝ていたはずなのに、疲れも、眠気さえもが取れていないのだ。

 

  最後に夢を見たのは、いつだったか……?

 

 「見てない、ようだな?」

 

  低く言った征志に視線を向けて、小さく頷く。大仰に溜め息を吐いた征志は、右手で頭を抱え込んだ。

 

 「ったく! 手の込んだ事しやがって」

 

  チッと舌打ちして、睨むように俺を見る。

 

 「大体、お前は昔っから……」

 

 「むかし?」

 

 「いや、いい。こっちの話だ」

 

  征志は面倒くさそうに手を振って、押し黙ってしまった。

 

  こういう時は、さわらない方がいいんだよな。そうすりゃ、タタリだってないんだから……。

 

  って、こいつは神様かよ!

 


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