宿運 扉6


 「二人なら、どこでだってきっと楽しめる。バイク乗って、タバコ吸って……。そうして…ずっと……。なあ僚紘。俺が、お前に世界を見せてやんよ」


  自信満々の孝亮が俺を見下ろし、ついて来いと手を差し伸べる。


 「勝手な事ばっか言いやがって! 人の人生まで勝手に決めてんじゃねぇぞ」


 「そうか?」


  俺は孝亮の手をガッと掴んで、立ち上がった。


 「バッカやろ、孝亮。大事なモン忘れてるだろ」


 「ん?」


 「タバコにバイク。それに、あんたの大好きなビールもいるだろ?」


 「ああ! そりゃ、欠かせないぜ。安心しろ。向こうのパブは世界一だ!」


  俺と孝亮は目を合わせて、プッと吹き出した。


  二人の影が、薄く揺れる。


  曇り始めた空は、震える月を隠そうとしていた。

 

 


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