「二人なら、どこでだってきっと楽しめる。バイク乗って、タバコ吸って……。そうして…ずっと……。なあ僚紘。俺が、お前に世界を見せてやんよ」
自信満々の孝亮が俺を見下ろし、ついて来いと手を差し伸べる。
「勝手な事ばっか言いやがって! 人の人生まで勝手に決めてんじゃねぇぞ」
「そうか?」
俺は孝亮の手をガッと掴んで、立ち上がった。
「バッカやろ、孝亮。大事なモン忘れてるだろ」
「ん?」
「タバコにバイク。それに、あんたの大好きなビールもいるだろ?」
「ああ! そりゃ、欠かせないぜ。安心しろ。向こうのパブは世界一だ!」
俺と孝亮は目を合わせて、プッと吹き出した。
二人の影が、薄く揺れる。
曇り始めた空は、震える月を隠そうとしていた。