「今夜は友人と食べるから俺の分はいい。買出しも車で送って行ってやれるが、帰りは一緒には戻って来れない」
1人分だけを作ればいい、と言ったミケに、「珍しいな」とリヴァイは僅かに目を見開く。
「なんだ。俺にだって友人や恋人くらいいる」
「いや、別に友人や恋人がいたっていい。あんたが私生活のことを ……恋人?」
手を等閑に振っていたリヴァイは、今度こそ身を引いてミケを見上げた。信じられない、と言外に言っているその顔に、ミケはスンッと鼻を鳴らす。
「まあ、無理に信じなくていい。そのメモが書けたら行くぞ」
ポケットからスマホを取り出し時間を確認すると、ミケは何やら操作を始める。約束しているという友人だか恋人だかに連絡しているのだろう。
まあいいけどな、と立ち上がったリヴァイは、財布の中身を確認して手を止めた。
「先生、支払いは……」
「ああ、勿論いつも通り折半で構わないぞ」
その答えを聞いて、リヴァイはホッと小さく息を吐く。
――貧乏って嫌だな。
まるで家計をやり繰りする主婦のようだ、とリヴァイはうんざり首を振った。