もろともに 1


 桜 にはまだ早いか。ってか、全然寒いし。

 

 俺は手を擦り合わせながら、校舎の階段を上がっていた。

 

 今日は卒業式だから、校舎の中は閑散としている。俺達1年の教室がある辺りなんかは尚更だ。

 

 卒業式っつったら、イメージでは桜なんか咲いてねぇ? でも実際は咲いてないよ なー。なんて思いながら「おーい、祐志~」と、友人の磐木祐志の名を口にする。

 

 階段を上がりきり、廊下に出たところで俺はハッとして足を止めた。

 

 慌てて階段側の壁へと隠れる。廊下の先、俺達の教室の前では、祐志と見知らぬ女生 徒が向かい合うようにして立っていた。

 

 なんて俺隠れてんだ? と思うけど、でもなんか、雰囲気が……。

 

 そーと、顔だけを半分出して2人を窺い見る。

 

 あのリボンは3年だよなぁ。卒業証書も持ってるし。祐志に部活以外に3年の知り合 いがいるなんて知らなかった。

 

 横顔からすると、中々かわいい顔をしている。それを見下ろす祐志の顔は――相変わらずの無表情だ。

 

 突如俯いた彼女が何かを言って、走り去って行く。こっちじゃなくて向こうに走って 行ってくれたのは、正直助かったと思った。だって――。

 

 


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