深い呼吸を繰り返す征志に近付こうとする俺の肘を、少年が両手で掴んで引き戻した。
「かわいそうにね、お兄さん。このお兄さんは、あなたを選んではいないよ。逝きたがってる。だからね、ボクと一緒に逝くんだ」
笑いを含んだ少年の言葉に、征志が俺を睨みつけた。
「ばっかやろが」
吐き捨てるように言う。征志は手荒く前髪をかき上げて、そのまま腕に顔を埋めた。その肩が、微かに震えだす。
「ソレデモ……ダメダ。オレハ、ミトメナイ」
ゆっくりと吐き出された征志の言葉に、俺は目を剥いた。腕を掴んでいる少年の手を、払いのける。
変だ。いつもの征志のしゃべり方じゃない。
それは、抑揚のない。そう、まるでロボットがしゃべったような、機械的な話し方だった。
「おい? ……征、志?」
踏み出そうとする俺の足に、何かが当たる。足元を見ると、なぜか少年が倒れ込んでいた。その体が、小刻みに震えている。
「なに…? どうしたんだよ」
体を引き起こすと、少年はダラリと反っていた首を、ゆっくりと起こした。
「……あのヒト…、なに…モノ……」
絞り出すように声を出すと、俺の肩に顔を埋めてくる。ガタガタと、震えもひどくなってきていた。
「……うっ、ぐる…ううっ…」
少年の喉が異様な音を鳴らし、体が震えから痙攣へと変わっていく。