目を剥いて。
もう見ないでおこうと思っていた轟の方を、思わず見返した。
轟は、ただ前を向いて。
無表情に言葉を紡ぐ。
「体育祭ん時は、余裕がなくて……。クソ親父が見に来てたし。爆豪に嫌われても、仕方ねぇと思ってる」
クソ親父、の言葉にもう一つ思い出して、ピクリと眉尻を上げた。
「――あァ、そーいや。俺にエンデヴァーとの会話を聞かれても動じなかったんだったな、テメェは。その辺の石っころと一緒だったってか、俺は」
「それは違ぇ」
すぐさま反論した轟に、驚いた。
そして互いに驚いた顔のままで、少しの間見つめ合う。
「上手く……言えねぇけど。あん時俺は……爆豪になら聞かれても構わねぇと思ったんだ」
向けられているまっすぐな瞳に、思わずたじろいだ。
「なんじゃ…そりゃ。俺だったから、とでも言いてェんかよ。……んなコト言って、どうせ誰にでも同じ態度だったんだろうが。テメェはよ」
――俺だからじゃねぇ。
「そうだな」
ぬけぬけと言いやがった轟に、心底苛立った。
「もう喋んなやッ!」
ボボッと無意識に掌で小さな爆発が起こる。
こんな会話、もうしたくねェ。
掌を握り込み歯をギリッと食いしばった俺へと、轟の視線が向けられていた。
「……わりぃ。また、怒らせちまったな」
ふ、と苦笑した轟が前を向く。答えない俺に、それでも少し俯くようにして言葉を続けた。
「――だけど。態度は同じでも、聞いてたのがお前と他の奴とじゃ、心の中はきっと違う。お前なら、言いふらしたりしないって、思ってた。俺に、くだらねぇ同情なんかしないって、判ってた」