進撃の巨人 二次創作

夢幻の忘却 5


 

 そうして「いいや」と首を横に振った。

 

 ずっと向けられたままの探る視線から逃れるように、ミケは腕時計に視線を落とす。そうしてスンッと鼻を鳴らした。

 

「悪いが、そろそろ待ち合わせの時間だ」

 

「ああ。ここまで持ってもらって助かった」

 

 両手の袋を軽く持ち上げて、リヴァイは礼を伝える。

 

「待ち合わせの場所には間に合うか?」

 

 友人を待たしては悪いだろうと思い確認すれば、ミケは少し笑ったようだった。

 

「なんだ?」

 

 怪訝に眉を寄せたリヴァイに、ミケは悪戯を含んだような視線を返す。

 

「心配はいらない。待ち合わせはそこだから」

 

 指差す先を、何気に目で追った。

 

「あぁ、もう来ているのか」

 

 早いな、と独り言のように呟きながらも、ミケは差した指を下ろさずにいる。だからリヴァイも、その方向を見たままでいた。

 

「彼が……俺の、友人だ」

 

 指差す先を追って、まず目に入ったのがミケの言う『友人』だった。

 

 ミケ程ではないかもしれないが、周りより頭1つデカい長身。やけに目立つ金髪は、夕陽に反射して眩しい程の光を放っていた。

 

「エルヴィン!」

 

 呼びかけたミケの声に、反応したのはその友人だけではない。リヴァイまでもが、ハッとしていた。

 

 ぼんやりしていた訳でも、考え事をしていた訳でもない。

 

 それでも、ハッとした。

 

 ただ言葉に出来ない『無』が、心に充満していたのだ。