「…………。すげーな爆豪。見事に注目の的だ」
俺の言葉に目を剥いて、フーッ、フーッ、と隣でなんとか怒りを抑えようとしている。
「――憶えてろや、この半分野郎が」
鬼の形相の爆豪を横目に、これ以上怒らせないよう、数をかぞえるのを再開した。
「いーち、にー……」
ギリッ、と。
握っていた手を、強く握り返される。
「いてぇ」
見ると、爆豪が更に恐ろしい形相になっていた。
「コロス……ゼッテーコロス……」
これ以上ないくらいの低い声で、呪いの言葉を口の中で唱え続けている。
「爆豪痛てぇ、――いや。マジでいてぇ……」
俺の手は、もう爆豪の手を握っていない。
今握っているのは、どちらかと言うと爆豪の方だ。
ギリ、ギリッ。
爆豪が歯を食いしばるたび、俺の手が強く握られる。
手が、使いモンにならなくなるのは困るな。
――でも。
「なあ爆豪。責任感じてる寂しそうな顔より、怒ってる今の顔の方が、お前らしくていいな」
バッとこちらを見て。爆豪が目を見開く。
これ以上なく優しさ溢れる笑顔で言ったつもりの俺に、爆豪は顔が真っ赤になるほど怒り狂いだした。
「テメェそれ今思いついただけだろが!! 人込み抜けたら即爆破したるわあぁぁぁぁッ!!」
「ちょっ、かっちゃん!?」
「やめろって爆豪。こんなトコで問題起こすなって」
弾かれるように振り返った緑谷と切島が、必死になって止めてくれる。
「いや、ちょっと待て爆豪。これで爆破は俺が可哀相過ぎねぇか?」
「自業自得だろうがよ、クソがッ」
「まあ、防ぐけど」
「防ぐ暇すら与えねぇわッ! 今すぐやってやろうか? あァ!?」
「やめて喋らないで轟君。今は穏便に済まそう? 仲良くしよう? 落ち着いてかっちゃん」
「爆豪君、轟君。どうしてキミ達はそうなんだ。今はまず――」
「うっせぇ、クソメガネがぁッ!!」
爆豪の手は、俺の手を握ったまま。
――ああ、そうか。
心を見せ合うのって、痛みを伴うモンなんだな……。