心の中 3


 

「…………。すげーな爆豪。見事に注目の的だ」

 

 俺の言葉に目を剥いて、フーッ、フーッ、と隣でなんとか怒りを抑えようとしている。

 

「――憶えてろや、この半分野郎が」

 

 鬼の形相の爆豪を横目に、これ以上怒らせないよう、数をかぞえるのを再開した。

 

「いーち、にー……」

 

 ギリッ、と。

 

 握っていた手を、強く握り返される。

 

「いてぇ」

 

 見ると、爆豪が更に恐ろしい形相になっていた。

 

「コロス……ゼッテーコロス……」

 

 これ以上ないくらいの低い声で、呪いの言葉を口の中で唱え続けている。

 

「爆豪痛てぇ、――いや。マジでいてぇ……」

 

 俺の手は、もう爆豪の手を握っていない。

 

 今握っているのは、どちらかと言うと爆豪の方だ。

 

 ギリ、ギリッ。

 

 爆豪が歯を食いしばるたび、俺の手が強く握られる。

 

 

 

 手が、使いモンにならなくなるのは困るな。

 

 

 ――でも。

 

 

「なあ爆豪。責任感じてる寂しそうな顔より、怒ってる今の顔の方が、お前らしくていいな」

 

 バッとこちらを見て。爆豪が目を見開く。

 

 これ以上なく優しさ溢れる笑顔で言ったつもりの俺に、爆豪は顔が真っ赤になるほど怒り狂いだした。

 

「テメェそれ今思いついただけだろが!! 人込み抜けたら即爆破したるわあぁぁぁぁッ!!」

 

「ちょっ、かっちゃん!?」

 

「やめろって爆豪。こんなトコで問題起こすなって」

 

 弾かれるように振り返った緑谷と切島が、必死になって止めてくれる。

 

「いや、ちょっと待て爆豪。これで爆破は俺が可哀相過ぎねぇか?」

 

「自業自得だろうがよ、クソがッ」

 

「まあ、防ぐけど」

 

「防ぐ暇すら与えねぇわッ! 今すぐやってやろうか? あァ!?」

 

「やめて喋らないで轟君。今は穏便に済まそう? 仲良くしよう? 落ち着いてかっちゃん」

 

「爆豪君、轟君。どうしてキミ達はそうなんだ。今はまず――」

 

「うっせぇ、クソメガネがぁッ!!」

 

 

 爆豪の手は、俺の手を握ったまま。

 

 

 ――ああ、そうか。

 

 心を見せ合うのって、痛みを伴うモンなんだな……。