「……お前は言ったよ、俺を信じろってね。だから、俺は信じたんだ。僚紘の言葉を。僚紘自身を」
顔を上げ、まっすぐと俺を見つめた男の髪が風に揺れ、その口元に自嘲の笑みが浮かぶ。
男は俺の手を離して、よろよろと後退る。力が抜けた両足が絡み、ぶつかるように銀杏の幹に凭れかかった。そのまま、崩れるようにカクリと膝をつく。
「その結果が、このザマさ。もう人なんか信じないと心に決めていたのに……」
言って土を掻き毟るように掴み、拳で地面を叩く。何度も。何度も。
「自殺し、迷いの為に路みちを見失ったか。面倒だが、俺が送り出してやるよ。せめて、心安らかに逝けるように」
征志の言葉に、ピクリと男が反応する。しばらく肩を震わせた男は、気が狂ったかと思うほど大きな笑い声をあげた。
「安らかに、だって? 安らげる訳ないだろ。お前に僚紘を奪い取られて!」
男の髪が逆立ち、周りに風が渦を巻く。
「うわっ…!」
強風に銀杏の葉が舞った。慌てて、両腕で顔を庇う。