幻の欠片5


 

 「お前ねぇ! 頼むよ、俺が怖がりなの知ってんだろ! 銀杏の樹の奴とは関わり合いも関わる気もないの! わかった?」

 

  手を振り上げて喚く俺をポカンと見つめた征志は、その後プッと吹き出して身をよじるように笑いだした。

 

 「ったく! 俺、時々お前の友達やめたくなるよ」

 

  笑う征志を尻目に、歩き出す。

 

  俺は普通の高校生活を送りたいんだぞ。何が悲しくて学校帰りに幽霊見つけて、そいつの世話をしてやんなきゃなんないんだ。

 

 「…なんで、まだ友達やってんだろな?」

 

  追いついた征志が、身を乗り出すようにして俺の顔を覗き込む。

 

 「知るかっ! この幽霊おたくのどこがいいんだか……」

 

  肩を竦めて、溜め息混じりに言ってやる。それでも征志は、おもしろそうにクスクスと笑った。

 

 「しっかしそうは言っても、俺が視みた限りでは、あいつはお前を狙ってんだよなぁ……」

 

  征志は鞄を頭の後ろで持つと、チラリと俺に目を向けた。

 

 「お前最近、何か変わった事ないか?」

 

 「変わったこと?」

 

 「そう。例えば……」

 

  人差し指を立てた征志は、それを尖らした唇へと持っていった。

 

 「例えばだな」

 

 「ああ、そういや最近。えらくねむい」

 

  ポンッと手を打って言う俺に、カクリと征志がうなだれる。

 


オリジナル小説 小説ブログランキング