「お前ねぇ! 頼むよ、俺が怖がりなの知ってんだろ! 銀杏の樹の奴とは関わり合いも関わる気もないの! わかった?」
手を振り上げて喚く俺をポカンと見つめた征志は、その後プッと吹き出して身をよじるように笑いだした。
「ったく! 俺、時々お前の友達やめたくなるよ」
笑う征志を尻目に、歩き出す。
俺は普通の高校生活を送りたいんだぞ。何が悲しくて学校帰りに幽霊見つけて、そいつの世話をしてやんなきゃなんないんだ。
「…なんで、まだ友達やってんだろな?」
追いついた征志が、身を乗り出すようにして俺の顔を覗き込む。
「知るかっ! この幽霊おたくのどこがいいんだか……」
肩を竦めて、溜め息混じりに言ってやる。それでも征志は、おもしろそうにクスクスと笑った。
「しっかしそうは言っても、俺が視みた限りでは、あいつはお前を狙ってんだよなぁ……」
征志は鞄を頭の後ろで持つと、チラリと俺に目を向けた。
「お前最近、何か変わった事ないか?」
「変わったこと?」
「そう。例えば……」
人差し指を立てた征志は、それを尖らした唇へと持っていった。
「例えばだな」
「ああ、そういや最近。えらくねむい」
ポンッと手を打って言う俺に、カクリと征志がうなだれる。