オリジナル小説

宿運 君がため 微弱な魂 1


 

 

 

  このクソ寒いのに、どうして鳥はあんなに元気なんだ?

 

  ピィービィーと甲高い声で鳴く、鳥を見上げる。

 

  尾の長い茶色い鳥。それが木の枝にとまって、叫ぶように何度も何度も鳴いている。

 

  一人での登校。友人の上宮 征志(かみつみや せいじ)は、相変わらずのさぼり癖を発揮していた。

 

  最近では、一人での登校も慣れてしまっている。

 

  ――いや、元々は一人で通っていたのだ。

 

  あいつが転校してくるまでは……

 

  征志は俺と知り合った次の日から、毎朝八時十五分に俺の家の前で俺を待つようになった。

 

  べつに約束をしたわけじゃないが、征志が遅刻してこない日は、一緒に登校するのが当たり前の事となっていた。

 

  征志と初めて会った日を思い出し、俺は、ほぅと白い息をゆっくりと吐き出した。

 

  征志と知り合った日。

 

  それは同時に俺の一番大切だった親友、孝亮(こうすけ)と会えなくなった日でもあった。

 

「三人だったら、もっと面白いのに……

 

  ポツリと呟く。己の左頬、縦にはいった大きな傷を、指先でなぞった。

 

  随分と長い時間が過ぎた気がするのに、あの事故からまだ一年も経っていない。

 

「孝亮。お前のいない毎日は、とても……永いな」

 

  胸の上で跳ねるように揺れる剣型のペンダントが、孝僚がよくやったように俺の胸を何度も叩く。

 

  まるでしっかりしろと、孝亮が喝を入れているかのようだった。

 

 ふと足を止め、顔を上げた。

 

  ――視線?

 

  目を向けたその先。遠くに見える、高い塀に囲まれた白い家。その三階の開け放たれた窓から、少女がこちらを見ている。

 

  祈るように胸のところで指を組み、じっとこちらを見つめていた。

 

「どうしたんだ?」

 

  無意識に、疑問を吐く。

 

  彼女は俺を見つめたまま、問いに答えるようにゆっくりと首を左右に振った。