オリジナル小説 宿運 『鍵12』(クリックで移動) 公開しました。
前世と今世、鬼と桃太郎伝説が絡みあってゆく、男子高校生達の物語。
一人で高校へと登校していた鏑木僚紘は、ふと道の真ん中に黒い物体を見つける。
■鍵 12(本文より)
振り向いてニヤリと笑った征志は、身を屈めて俺の前にしゃがみ込んだ。
「すぐ腰抜かすくせに、霊に関わるの好きなんだな、お前」
膝に頬杖をついた征志が、呆れた声で言う。その征志を見上げて、俺は鼻を鳴らした。
「べっつに! 好きなワケじゃ、……あぁ!」
瞬時に立ち上がり、辺りを見回す。
「あいつ! あいつは?」
キョロキョロと見回す俺の肘を掴んで、征志が一点を指し示す。
その先には、白い仔猫が首と腹から血を滴らせ、ぐったりと倒れていた。
「あいつ!」
俺が駆け寄ると同時に、薄く目を開けた仔猫は、再び人間へと姿を変える。
「大丈夫か! 首と腹をやられたのか?」
体を支え上げた俺をチロリと見ると、弱々しく口許に笑みを浮かべた。
「どうって事ないよ。だってボクはすでに死んでるんだもん。……お兄さんは似てるから、テツヤに。ボクを拾ってくれた人に。ボク、あいつの泣いてるとこ、見たくないと思ったんだ。もう2度と」
震える指で、俺の頬を撫でる。
「テツヤが、泣かなければいい。ねぇ、ボクがいなくなっても、どうか、泣かないで……」
「知らせなくてもいいのか? お前がもう、いない事」
俺の言葉に目を閉じて、力なく笑う。
「ホント似てるね。……だから、やっぱりお兄さんも連れてけないや」
「バカ…ヤロ…」
ゆっくりと近付いてきた征志が俺の前に膝をつき、少年の頭をそっと撫でる。