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オリジナル小説『宿運』 鍵 11


オリジナル小説 宿運 『鍵11』(クリックで移動) 公開しました。

 

前世と今世、鬼と桃太郎伝説が絡みあってゆく、男子高校生達の物語。

一人で高校へと登校していた鏑木僚紘は、ふと道の真ん中に黒い物体を見つける。

 

 

 

 

■鍵 11(本文より)

 

「俺か……? 俺のせいなのか?」

 

 俺が、闇にのまれようとしたから……?

 

 その言葉に反応したように、ガッと、征志の手が俺の腕を掴む。

 

「泣くな」

 

 顔を上げてそれだけを言うと、勢いよく立ち上がり、歪んだ空間を振り仰いだ。

 

「抑え過ぎた、俺の感情より生まれ出た歪みか!」

 

 ギリギリと歯を食いしばり、征志が巨大な腕を睨み据える。

 

「ふざけるなよ、俺に敵かなうはずがないだろう! 下がっていろ、鏑木! お前も離れろ! 早くしないと、一緒に消してしまうぞ!」

 

 征志の声に、仔猫が素早く腕から飛び降りる。

 

「天魔外道(てんまげどう)皆仏性(かいぶっしょう)、四魔三障成道来(しまさんしょうじょうどうらい)、魔界仏界同如理(まかいぶっかいどうじょり)、一相(いっそう)平等無差別!」

 

 唱えながら、赤銅色の腕を押し戻すように両手を前に突き出す。その手を掴もうとした手が、征志の手に触れる寸前、弾けるように腕を引っ込めた。そのまま歪んだ闇もろとも、吸い込まれるように消え失せる。

 

「オン、バサラ、トシコク!」

 

 パンッ! と征志が手を叩くと同時に辺りが明るくなり、いつもの朝の空気が流れだした。

 

 それまで聞こえなかった車の音や、遠くで話す人の気配が微かに耳に届く。

 

「すっげぇ。……あんなの出したり消したり出来んだな、征志」

 

 ペタリと地面に座り込みながら、俺はのんびりと言った。ドッと体の力が抜けていく。

 

 

「鍵は、お前さ」

 

 

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