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オリジナル小説『宿運』 鍵 4


オリジナル小説 宿運 『鍵4』(クリックで本文) 公開しました。

 

前世と今世、鬼と桃太郎伝説が絡みあってゆく、男子高校生達の物語。

一人で高校へと登校していた鏑木僚紘は、ふと道の真ん中に黒い物体を見つける。
それが人間から虐待を受けた子猫だと判り助けようとするが、僚紘の目の前で死んでゆく。死んだ子猫を埋めてやろうとする僚紘の前に現れたのは、白い服を着た少年だった。

 

 

 

■鍵 4 (本文より)

 

「…くっ…」

 

  土を掘る泥塗れの手が、ボヤリと霞む。

 

  ポタリと土に滴が落ちて、すぐに吸い込まれていった。何度拭いても、涙が溢れ出す。

 

 「なんでお前、こんな事に」

 

  呟いた途端。滲む視界に、ある情景が浮かびあがった。

 

  笑顔で手を差し伸べる人間達。ぼんやりとしてはっきりとは見えないが、もしかしたらその手にはエサが乗っているのかもしれない。その、親しみをもった笑顔に、やさしさの感じられる手の温もりに、気を許した途端、視界に入ってきた、ボーガンを構える男。

 

 きっとまだ学生だ。俺達と、同じぐらいの。小首を傾げるようにして、片目を閉じている。だが、その口許は――笑っていた。

 

 「今の……って……」

 

  見えた幻覚を振り切るように、慌てて首を振る。

 

 「まさか……」

 

  お前が、やられた時の?

 

  俺の言葉に応え、見せたのか。なんで自分が、こんな事になったのかを。

 

  ブルリと勝手に体が震え、どれ程怖かっただろうと思う。

 

  俺は制服からそっと仔猫を抱え上げ、ボーガンの矢を抜いた。汚れた体を、水の中で洗ってやる。

 

 「こんなにきれいな毛だったんだな、お前」

 

  さらに小さくなったように感じられる仔猫を、掘った穴に埋めてやる。

 

 

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