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オリジナル小説『宿運』 鍵 3


オリジナル小説 宿運 『鍵3』(クリックで本文) 公開しました。

 

前世と今世、鬼と桃太郎伝説が絡みあってゆく、男子高校生達の物語。

一人で高校へと登校していた鏑木僚紘は、ふと道の真ん中に黒い物体を見つける。
それが人間から虐待を受けた子猫だと判り助けようとするが、僚紘の目の前で死んでゆく。死んだ子猫を埋めてやろうとする僚紘の前に現れたのは、白い服を着た少年だった。

 

 

 

■鍵 3 (本文より)

 

 俺はその小さな、片手で充分持ち上げられる仔猫を抱き上げ、点々と続く血に気付いた。

 

 「ここまで、逃げてきたのか……」

 

  痙攣と震えが止まらない仔猫を抱き締める。なんで人は、遊びでこんな事が出来るんだ。

 

 「こめん……、ごめんな。……ごめん…」

 

  謝る事しか出来ない俺の頬を、小さな舌が舐める。いや、もう舐める力なんて残ってやしない。頬に触れるのがやっとだった。

 

 「…ャ……」

 

  最期に聞き取れない声でひと声鳴いて、仔猫は動きを止めた。

 

 「……っとに……ばか……や……ろが……」

 

  まだ人を敵として牙を剥き、爪をたててくれた方が、いくらも救われる。

 

  俺は袖でゴシゴシと目を擦って、仔猫を抱いたまま立ち上がった。

 

 「埋めてやらないと……」

 

  もう、学校に行く気にもならない。

 

  俺は詰襟を脱いで仔猫を包み、学校の裏手にある河原に向かった。

 

 

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